花にはそれぞれに象徴する意味、花言葉があり、国や一族を象徴する花、植物等も存在します。
ですので蔵書票に描かれる事も多いのですが、版画で花を表現する場合、どうしてもネックになるのがモノトーンである事です。
花の花たる魅力の大部分がその色彩にあるので、モノクロで表現してもその魅力が再現し難いからです。
木版画で多色刷りをする場合は結構な手間が掛かりますが、浮世絵版画では版木を何枚も制作して刷りを重ね、花の美しさを味わい深く表現しています。
銅版画では19世紀に活躍したフランスの宮廷画家ルドゥーテが、細密な点刻彫版による素晴らしいカラー植物画を制作しました。
モノクロ版画に手彩色という技法もあるのですが、蔵書票となると数が多いので全て彩色するには恐ろしく手間が掛かります。
版画による色彩表現が一般的になるのは19世紀に石版画の技術が進化してからで、ミュシャ、ロートレック等は色鮮やかなポスターで一世を風靡しました。
しかし色彩をほぼ自由に使える現代であっても、写真と同様にあえてモノトーンの表現に拘った作家もおり、花の版画表現はまさに百花繚乱なのです。
今回は作家が果敢に単色での表現に挑戦した、モノトーンによる花を集めてみました。
銅版画による植物表現の第一人者 E.D.Frence
アールヌーボー時代には植物文様が装飾として好まれました。 Oskar Roick
樹木が得意なドイツの作家 Adolf Kunst の面白い花の表現
J.Siaeger
図鑑のような細密表現 Ranzoni
B.Kuhlmann
次回はカラー編です