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Channel: 蔵書票研究所 鎌倉
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シンプル・バイロス

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 Franz von Bayros と言えば蔵書票の世界では知らない者は無いカリスマ作家です。彼の制作した作品はあまたの蔵書票の中でも最高峰の芸術性と人気を誇りますが、その官能と倒錯に彩られたエロスの過激さゆえか、未だに地下芸術として扱われ、特に日本では正当な評価を得ていません。
バイロスの本領はマニエリスム的に緻密に描き込まれた描線と、その退廃的エロスにあると言えるのですが、その320点を超える蔵書票の中には極めてシンプルな作品や、子供をテーマにしたファンシーな作品等もあります。それらの蔵書票だけを集めてみると、シンプルゆえに逆にバイロスの卓越したデザインセンスが浮き彫りとなり、あらためてバイロスの実力が認識されるのです。

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子供の領分

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蔵書票に描かれた子供たちのほとんどは票主の子供か親族がモデルでしたが、それ以外にも象徴として子供を描く場合もあります。子供は未来、希望、子孫繁栄の象徴であり、メメントモリにおいて死の対極にある、生命そのものの象徴として若い女性像と並び多く描かれています。また男でも女でも無い未分化な性は純粋なるもの、聖なる存在として尊ばれ、羽根を付けてエンジェルとして描かれる場合もあります。

今回はエンジェルでは無い、人間としての子供たちを集めてみました。
 Frank Brangwyn
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 Hans Bastanier
 
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 Rob Langbein
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大帆船時代

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15~17世紀にヨーロッパで飛躍的に進化した造船、航海技術は、植民地政策とあいまって、いわゆる大航海時代をもたらし、多くの冒険家、野心家を海の彼方のフロンティアへといざないました。当時の船舶は商船、軍船いずれも帆船であり、その黄金時代は19世紀中期に蒸気船が開発されるまで続きました。その後天候や風に左右されない動力船は瞬く間に帆船を駆逐し、実用船としての帆船は20世紀半ばにほぼ姿を消します。しかしその美しく雄大な姿は、いにしえの海へのロマンを彷彿とさせ、現代でも多くのファンの憧れであり続けているのです。

蔵書票に描かれた船は、票主が船主、乗務員の場合も多いのですが、異国への旅、冒険への憧れを、海、船に託して描く場合もあります。また「さまよえるオランダ人」や「船乗りシンドバット」のような物語、伝説の中に描かれたシーンを描く事もあります。
 

  Brentanus 
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 作者不明 軍船です
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 B Wenig  シンプルな一枚帆
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 輸送の要だった河川の場景です  作者不明
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 作者不明
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 いかにも植民地の港って感じです  H.E.Bahre
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 K Ritter 
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そして船はゆく

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蔵書票に描かれた船は時代によって変化し、船舶の進歩をそのまま反映しています。小舟から現代の大型客船に至るまで、また軍艦、ヨット、漁船等、様々な種類の船舶も描かれています。
今回は蔵書票に描かれた大型帆船以外の船を集めてみました。

 ヨーロッパの河川で19世紀頃までポピュラーだった1枚帆の帆船です
  Gerhard Wedepohl
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 いわゆるゴンドラ型です   Hans Bayerlein 
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 ヨットの原型ですね   HansThoma 
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 蒸気船です。幕末日本に来た黒船がこの型に近いです 柳田基さん
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 近代に入りました 作者不明
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 タイタニック型の大型船の登場です

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 珍しい船上からの眺め 1941年頃です
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蔵書票仮面の告白

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仮面は世界中のほとんどの地域で古代から宗教行事、祭祀などに使われていました。
演劇の世界では、自分以外の者に変身する重要なアイテムとして用いられ、ヨーロッパではシェイクスピアの「ハムレット」にも登場する無言劇(パントマイム)や、「真夏の夜の夢」に出て来る仮面劇等の伝統があります。
イタリアにはドミノマスクを被るマスカレードがありますが、そのコスチュームやマスクは今では何やら怪しげな象徴として使われています。
現代の心理学ではペルソナが人格の意味として定着し、物語のテーマ、モチーフとしても頻繁に使用されるようになりました。
仮面はその美術的価値はもとより、様々な象徴的、暗示的な存在として蔵書票の画面に登場しています。

  演劇ライブラリーの蔵書票
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シェイクスピアを初めとする戯曲、演劇を愛する票主が、その象徴として画面に描く事も多かったようです。  Edwin Davis French
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 Adolf Uzarski
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  Josef Sattler
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 キューブリックの「アイズ ワイド シャット」を思わせます。  ベッケルさん
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 Vladimir Suchanek
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 Hristo Kerin  ブルガリアの現代作家です
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私の世代は仮面と言えばやっぱり「仮面ライダー」と「ガラスの仮面」です。
メキシコのルチャ・リブレ、日本の伎楽や能も面が重要ですね。
マスクは奥深い世界です。

種まく人の晴耕雨読

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晴れた日には田畑を耕し、雨の日には読書をする。このような生活を晴耕雨読と言いますが、故事によると悠々自適の意味もあるそうです。
しかし晴耕雨読がそのような悠長な生活ばかりとはかぎりません。近代以前ほとんどの農民は貧しく、貧しさゆえに労働しながら学問する場合も多かったのです。
ミレーの「種まく人」は絵画史に残る傑作として有名です。ゴッホを初め多くの画家が影響を受け、同様の主題で作品を描いています。
牧歌的で平和なイメージだけでは無い、貧しく厳しい農民の生活を描いた絵画は、19世紀ヨーロッパで労働者階級の台頭と共に多く描かれるようになりましたが、蔵書票にもその影響は見られます。
それまで貴族や富裕層のものだった書籍、読書が農民や庶民階級にも降下拡散していった時代の流れが蔵書票にも垣間見られるのです。

 Rob Langbein
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  G Broel
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 Georg Barlosius
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  自ら農村に引きこもった?Otto Ubbelohde
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 手押しの耕作機
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 作者不明
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311レクイエム

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あの日私は

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末廣 吉成 氏作

道化師たち

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中世ヨーロッパの王宮には「宮廷道化師」というものが存在していました。
宮廷にあって芸や話術で座を和ませるコメディアンの役割を担っていたのですが、その立場は特殊な位置にあって、ヒエラルキーの埒外に置かれた存在でした。
道化師は王や貴人に対しても自由に皮肉や悪態をつく事が出来、時には主人の言動や施政を批判する、いわば政治的なブレーンやオンブズマンとして機能する存在でもあったのです。中にはポーランドのスタンチクのように、国政に重要な役割を果たした極めて有能な道化師も存在しました。しかしひとたび権力者の機嫌を損ねれば容赦なく追放され、首をはねられる事もあったので、そのギリギリの線を見極めてのジョークはまさに命懸けだったのです。
18世紀に王制や貴族社会が次々と瓦解すると宮廷道化師の存在も消 滅しますが 、芸人としての道化師は劇場やサーカスのクラウン、ピエロとして現代まで存続して います。
ピエロはコメディアンとして笑われる存在であるがゆえに、悲哀の目で見られる事も多く、ルオー、マネ、ピカソ等多くの画家に画題として好まれました。
文学的に道化師は「常識と誠実さ」の象徴とされていますが、この意味は逆説的で多々解釈があります。又笑いが死と同様に全ての人に分け隔て無い存在である事から、死神と同様に扱われる場合もあります。その他にも、オールマイティー、批評家、皮肉屋、傍観者、愚者、自由、演技者などの象徴的意味があります。
近年ではスティーブン・キングの「I.T」や、バットマンのジョーカーのように邪悪なピエロも多数登場しています。

  J.Singer
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 作者不明
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中世の道化師のコスチュームはカラフルな衣装にロバの耳が付いたかぶり物をかぶっていますが、西洋でロバは 「愚鈍」「馬鹿」の代名詞なのです。イソップ童話に 「王様の耳はロバの耳」という話がありますが、ロバの耳が道化を象徴している事は日本ではほとんど知られていません。それを知ってこの話を読むとまた違った寓意が見えて来るのです。

 天使、悪魔、死神、そして道化師      Josef Sattler
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 人形劇とピエロ 寓話的です   作者不明
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 哀しきピエロ
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 バイロスの描く道化師
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 クラウンはアクターでもありました   Martin Erich Philipp
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ハンター×ハンターのヒソカもピエロキャラですね。ワンピースのバギーも好きです。
ゲームでもピエロキャラは定番ですね。

画家のいた場所

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18世紀後半にヨーロッパで純粋芸術という概念が生まれるまでは、画家、デザイナー、職人等の境界はそんなに明確ではありませんでした。例えば、建築を装飾する為に彫刻や絵画があり、同様に家具やインテリア、食器などの工芸品が必要だったので、一つの工房(制作者集団)が総合的に物件のプロデュースをする事も普通にあったのです。
19世紀になると印刷技術の飛躍的向上と、書籍や紙媒体の需要が増えた事で、応用芸術家、今で言うグラフィックデザイナーという職業が確立します。広告、ポスター、雑誌の挿絵、メニューや包装紙等のいわゆる商業デザインはデザイナーの仕事に振り分けられたわけですが、純粋芸術を目指す者がみな画業だけで生活出来た訳ではありませんでしたので、糊口を凌ぐ為にデザインの仕事をしていた画家たちも普通に存在しました。現代では巨匠として高く評価されているロートレックやミュシャ等も素晴らしいグラフィックデザインの仕事を残していますが、デザインの仕事がファインアートに比して格下の仕事では決して無かったのです。
蔵書票の制作も当時のデザイン業界では収入の一角を占める大事な仕事の一つでした。蔵書票専門の作家も存在し、人気の作家はそれ一本で生活出来たのです。


票主が画家だったのか、絵が趣味だったのかはわかりません
 Rob Langbein

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野外で絵を描くようになったのは印象派以降ですので、そのスタイルで大体の時代が判ります。  Arthur Henne
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 Karl Michel 自画像による自票です
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 Magda van Reusel ベルギーの作家です
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 アールヌーボー時代 M.Mario
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 作者不明
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海を見ていた午後 作者不明
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森と樹の詩

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ドイツの森林信仰、ケルトのドルイド、世界樹の神話等、樹木を神格化する宗教や物語は洋の東西を問わず世界中に存在します。
ランドスケープとして森を描いた蔵書票は多数制作されていますが、今回はその中でも樹そのものを描いた蔵書票を集めてみました。
あえてその一本を描いたという事は、票主がその樹によほどの思い入れがあったのか、なんらかの意味があったのでしょう。それらを想像するのもロマンチックなのです。

 A.N.MACDONALDO の見事な銅版画 宗教的象徴が隠されています
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   森と樹と言えばドイツのこの方    Adolf Kunst
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 神秘的な自然を描く名匠 G.BROEL
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 G. WEDEPOHL イメージ 4

  植物装飾も素敵 
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 あえて枯れ木を描いた理由は・・・ Otto Ubbelohde
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ドルイドにおける樫の木、キリスト教の林檎、オリーブの樹等、宗教的意味を持つ樹木は多数存在します。
日本では注連縄を張ればその樹はたちまちご神木になるのです。


ラ・マンチャの男

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スペインの作家セルバンテスの小説ドン・キホーテ(El ingenioso hidalgo Don Quijote de La Mancha)は、近代小説の先駆けとしての文学的な価値はもとより、喜劇でありながらその人間洞察の奥深さと、奇想天外な物語の面白さによって、現代まで世界中の多くの人々に読み継がれて来ました。その影響は文学のみならず、音楽、演劇、美術、映画など他の多くのジャンルに広がり、様々な創作のテーマとして使用されています。
キホーテの狂気でありながら極めて一途な信念と希望に満ちた行動は、道化として描かれているにも関わらず悲哀を誘い、その姿を己に投影させ、愚直さを自嘲する知識人等も多く存在しました。
愛すべきキャラクター、ドン・キホーテは蔵書票のテーマとしても人気があり、数多くの蔵書票が作られて来ました。ドン・キホーテの蔵書票を専門に制作、蒐集しているコレクターもいるほどなのです。


 M..J.Colom スペインの作家です
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最近の若い方はドンキホーテと言えばあのお店ですので、セルバンテスを知らない方も多いと聞きます。   L.Mallol
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日本にはドンキホーテ蔵書票コレクターとして有名な関根烝治先生がいらっしゃいます。  Sergey Hrapov  ウクライナの作家です
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 Chen Chi-Tsun
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 Pavel Hlavaty
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 W.S  古い蔵書票ですイメージ 6

蔵書票は数が膨大ですので、テーマを決めて蒐集するのも楽しい方法なのです。

ドン・キホーテ・ドフラミンゴのモデルはマーク・ボラン?ポルナレフ?

花の蔵書票 1. 色の無い花

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花にはそれぞれに象徴する意味、花言葉があり、国や一族を象徴する花、植物等も存在します。
ですので蔵書票に描かれる事も多いのですが、版画で花を表現する場合、どうしてもネックになるのがモノトーンである事です。
花の花たる魅力の大部分がその色彩にあるので、モノクロで表現してもその魅力が再現し難いからです。
木版画で多色刷りをする場合は結構な手間が掛かりますが、浮世絵版画では版木を何枚も制作して刷りを重ね、花の美しさを味わい深く表現しています。
銅版画では19世紀に活躍したフランスの宮廷画家ルドゥーテが、細密な点刻彫版による素晴らしいカラー植物画を制作しました。
モノクロ版画に手彩色という技法もあるのですが、蔵書票となると数が多いので全て彩色するには恐ろしく手間が掛かります。
版画による色彩表現が一般的になるのは19世紀に石版画の技術が進化してからで、ミュシャ、ロートレック等は色鮮やかなポスターで一世を風靡しました。
しかし色彩をほぼ自由に使える現代であっても、写真と同様にあえてモノトーンの表現に拘った作家もおり、花の版画表現はまさに百花繚乱なのです。

今回は作家が果敢に単色での表現に挑戦した、モノトーンによる花を集めてみました。

 銅版画による植物表現の第一人者 E.D.Frence
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 アールヌーボー時代には植物文様が装飾として好まれました。 Oskar Roick
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 樹木が得意なドイツの作家 Adolf Kunst の面白い花の表現
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  J.Siaeger
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 図鑑のような細密表現 Ranzoni
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 B.Kuhlmann
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 次回はカラー編です

花の蔵書票 2. 花の色は

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蔵書票に描かれた花、今回は色つきの花です。
銅版画、木版画、石版画それぞれの技法の違いによって花の表情も違います。
儚き花の色をいかに表現するか、作家の技術との格闘跡も見所なのです。

 Rudolf Sieck  銅版画です
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 アールヌーボー時代の花  石版画
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 Edmund Peter  木版です
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 技法不明  Bernhard Kuhlmann
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 Janescek Dolen  多分銅版画
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 肥田 聡さん  日本的木版表現です
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 柳田 基さん  木版の桜です 素敵です
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さて、お気づきのように花の王様薔薇が出てきませんでしたね。
蔵書票に描かれた花で一番多いのがやはり薔薇なのです。
次回は薔薇特集です。


花の蔵書票 3. 薔薇

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薔薇はその華麗で多彩な色彩と造形のゴージャスさから、まさに花の女王といった品格があります。
薔薇の花言葉は色によって異なりますが、赤い薔薇が象徴する「愛」「情熱」「美」等が最も一般的なイメージではないでしょうか。
ギリシャ神話に登場する愛と美の女神アフロディーテを象徴する花であり、キリスト教においては聖母マリアを象徴するとされています。
他にも様々な事柄の象徴とされているのですが、総じて「愛と美」に関連する事柄がほとんどです。
しかし愛と美と言いましても綺麗事ばかりでは無く、愛には当然の付き物、嫉妬、秘密、愛欲、エロス等をも象徴する場合があります。
蔵書票に描かれた花の中では薔薇が最も多く描かれており、女神や女性像と共に描かれたり、アーチや装飾としても頻繁に描かれています。

 アールヌーボー時代の薔薇装飾です  Maria Luise Hamann
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バイロスは別名「薔薇の画家」とも呼ばれる程にその画面に薔薇を描き込みました
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  様々な象徴的解釈が可能な図像です   Hugo Bantau
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   単純化された薔薇の装飾です 作者不明
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 木版による薔薇 Francoise Rohmer
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 スロバキアの現代作家 Karol Ondreicka
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薔薇と言えばこの方を忘れる訳にはいきません。「伊藤文学」さんの蔵書票です。
制作は対比地光子さんです。
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版画工房の刷師たち

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木版画から銅版画、そして石版画へと版画の技法は時代と共に進化し、また深化してきました。写真が発明される以前、版画で表現される「絵」は文字のみの印刷を補う重要な情報でもあり、出版文化の一翼を担ってきたのです。
本の歴史と共にある蔵書票も当然出版文化体系の中にあり、時代毎の技術レベルや流行によって進化し変化し続けて来ました。
日本の浮世絵は絵師、彫師、刷師と分業制になっていましたが、それぞれの過程に高度な技術を持つ職人が存在しました。
西洋の版画にもかつてはこれに近い役割分担があり、絵をデザインする画家と、実際に版を作る職人が分かれている場合も多かったのです。
自画、自彫、自刷を行う作家はもちろんいましたが、多くは「工房」と言うデザイン事務所兼印刷所で制作されていました。
蔵書票の中にはそれらの工房や印刷機、職人等を描いたものが存在し、時代による技術や仕事の変化が垣間見え大変興味深いのです。

 G.Bowssery  1946年頃
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1798年、ドイツのアロイス・ゼネフェルダーによって開発された石版画、リトグラフは、19世紀ヨーロッパの出版文化に色彩表現の革命をもたらせました。 作者不明
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 作者不明
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 PF.Morvan
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  作者不明
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 小人の工房です  作者不明
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 マイスターの誇りが感じられますね。

ヌードな銅版画蔵書票

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蔵書票は本に閉じられた世界なので、票主のプライベートや秘密を閉じ込めた場所でもありました。その為?なのか蔵書票にはヌードが非常に多く描かれています。
ヨーロッパのキリスト教社会で抑圧された性表現がこんな所にあったのか、と思う程過激で直截的なエロ図柄も多数存在します。
絵画、彫刻においてもそうですが、ヌードは官憲等の検閲を逃れる為に、神話の女神や物語に名を借りて描いたり、芸術「的」に描いてカモフラージュしたりと涙ぐましい努力を重ねて描かれて来たのです。
よく勘違いした方々が「これは芸術的な裸体表現で、扇情的なポルノでは無い」なんて事を言いますが、扇情的で無い裸なんて何の価値も無いと私は思うのですが・・・。須くヌードはエロスであり猥褻であり芸術であるのです。

今回は19世紀後半から1940年代までの、銅版画によって細密に描かれたヌードを集めてみました。
写真技術が発達するまでは銅版画による細密描写が印刷図版の主流でした。
描かれたヌードは現代から見るとリアル過ぎて解剖学的に見え、むしろグロテスクに感じられたりもします。

 作者不明
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 精巧な銅版画はやはりドイツの作家が多いですね
 Kulhaneks
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 Herman Katelhon
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 作者不明 巧すぎです
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  Hanns Bastanier 巧いけど細密に描けば良いってもんじゃないですイメージ 7

線の女

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ヌードは労力と時間をかけて描き込むよりも、単純な線のみで描く方がはるかに難しく、またシンプルゆえにあからさまに画家の実力が現れてしまいます。デッサンやクロッキー等の基礎をどれだけ修練したのか、観る人がみれば一目瞭然で誤魔化しが効かないからです。それでもあえて単純化した表現で勝負したからには、画家に相当な実力と自負があったのでしょう。
今回選んだ蔵書票は、手練れの実力者達が描いた線の女たちです。
このようなシンプルなヌードは、いわゆる描き込んだ作品に比べてあまり人気がありませんが、その芸術性においてなんら劣る物ではないのです。

 Evald Okas  エストニアの画家です
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 Wille Nielsen  北欧の版画家
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 Rudolf Kock ドイツ
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 日本シュールレアリズム界の巨匠 古沢岩美 先生
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 Karel Benes  背面の美です ベネシュは過小評価されている作家ですね
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  同じく背面の美 L.Eygelshoven ベルギーの作家です  
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木版の女

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木版画は銅版画等に比べて細密な表現は苦手なのですが、ダイナミックで大らかな表現力が魅力です。木版ならではの省略とデフォルメによる表現主義的なヌードは、精緻な表現とはまた違った素朴で原初的なエロスがあるのです。

 Gian Luigi Uboldi
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 Jozsef Farkas ハンガリー
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 Rockwell Kento  アールデコです
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靴下の女

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孤独な男達に
温もりを与えましょう
哀れな男達に
至上の快楽を与えましょう
その傷ついた心と身体を
愛の幻で満たしましょう
ほんの少しの対価を払えば
私は貴方の恋人
ほんの少しの時間だけ
私があなたの思い出
ずうっと昔から
私は此の街にいる
娼婦と言う名の女神
ずうっとこれからも
私は此処にいる
靴下を履いた女神

      Karel Simunek
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 Dr Jean Morisot
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  作者不明

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            Bajor Agost
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河童天国

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子供の頃 水木しげるさんのマンガ「河童の三平」が大好きでした。テレビでも実写ドラマが放送されていて、当時白黒画面の妖怪たちが子供心にものすごく怖かったのを覚えています(悪魔くんはもっと怖かったです)。
河童は様々な民話、伝承に登場し、妖怪の中でも親しみやすくユーモラスなイメージがあります。夏になるとワイドショーや納涼怪奇番組で、各地に伝わる河童伝説や河童のミイラ等がお約束のように取り上げられますが、毎年ついつい観てしまいますね。
黄桜酒造のCMでおなじみ「河童天国」は初代が「清水崑」さんで2代目は「小島功」さんがお描きになっていました。どちらも味のある色っぽい絵柄で素敵でした。
最近では「荒川アンダーザブリッジ」の村長が印象的です。

たまには日本の伝説も取り上げようと、蔵書票に描かれた河童を探してみたのですが結構見つかりました。

 川田喜一郎 
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 佐野隆夫
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 前田政雄 
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 塚越源七 
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 中川雄太郎 
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       造本作家、若山八十氏の描いた孔版による河童
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